おうち療育ヒント集

【応用編】発達障がいのあるお子さんの抽象概念理解を深める家庭での具体的なヒントと声かけ

Tags: 発達障がい, おうち療育, 抽象概念, コミュニケーション, 声かけ, 家庭支援

はじめに

発達障がいのあるお子さんは、物事を具体的・直接的に捉えることが得意な一方、「時間」「気持ち」「未来」といった形がなく、目に見えない抽象的な概念の理解に難しさを感じることがあります。これは、お子さんの理解不足ではなく、情報処理の特性によるものです。

基本的な特性への理解をお持ちの保護者の皆様は、お子さんの成長とともに、より複雑な抽象概念や社会的なルールの理解につまずく場面に直面し、これまでの具体的な指示だけでは対応が難しいと感じることもあるかもしれません。

この記事では、発達障がいのあるお子さんが抽象的な概念をより深く理解できるよう、家庭で実践できる一歩踏み込んだ具体的なサポート方法や声かけのヒントをご紹介します。お子さんの「分からない」を「なるほど」に変えるための、応用的な視点を提供できれば幸いです。

なぜ抽象概念の理解が難しいのか

発達障がい、特に自閉スペクトラム症のあるお子さんは、情報を全体的に捉えるよりも、細部に注目したり、具体的な事柄を結びつけて理解したりする傾向があります。そのため、以下のような特性が抽象概念の理解を難しくすることがあります。

これらの特性を踏まえ、お子さんが抽象概念を理解するためには、見えないものを「見える化」したり、具体的な経験と結びつけたりするサポートが必要になります。

家庭でできる抽象概念理解のための具体的なサポート方法

ここでは、いくつかの代表的な抽象概念に焦点を当て、家庭で実践できる具体的なサポート方法と声かけ例をご紹介します。基本的な視覚化ツールの利用から一歩進んだ応用的なアプローチを含みます。

1. 「時間」や「未来」「過去」の概念

時間や未来、過去は目に見えません。これを理解するために、視覚的なツールは非常に有効です。

2. 「気持ち」や「感情」の概念

他者の気持ちや自分の気持ちを理解することは、社会生活において非常に重要です。

3. 「ルール」や「社会的な約束」の概念

学校や社会には様々なルールがありますが、その「なぜそうなのか」「状況によってどう変わるのか」といった抽象的な部分は理解しにくいことがあります。

4. 見えない「感覚」や「状態」の概念

「疲れた」「集中している」「落ち着かない」など、自分の内的な状態や感覚も、抽象的で見えにくいものです。

サポートを進める上での大切なポイント

学校や専門機関との連携

家庭での取り組みと並行して、お子さんが過ごす学校や放課後等デイサービスなどの関係機関と情報共有を行うことも非常に重要です。どのような概念の理解に難しさを感じているか、家庭ではどのようなサポートを行っているかなどを伝え、共通理解のもとで一貫したアプローチができると、お子さんの混乱を減らし、理解を深める助けになります。

専門機関のセラピスト(ST, OT, 公認心理師など)に相談することで、お子さんの特性に合わせたより専門的な視点からのアドバイスや、具体的なトレーニング方法の提案を受けることも可能です。一人で抱え込まず、利用できるサポートは積極的に活用しましょう。

まとめ

発達障がいのあるお子さんの抽象概念の理解をサポートすることは、根気と工夫が必要な取り組みです。「時間」「気持ち」「ルール」といった見えない世界を、視覚化や具体的な経験、繰り返しの声かけを通して「見える化」していくことが、理解を深める鍵となります。

お子さんの「分からない」は、決して能力の問題ではなく、情報の受け取り方の特性によるものです。お子さんのペースに合わせ、スモールステップで、そして何よりも温かいまなざしと肯定的な声かけをもってサポートを続けていくことが大切です。

この記事でご紹介したヒントが、日々の生活の中で、お子さんの世界を広げ、生きづらさを少しでも減らすための一助となれば幸いです。