おうち療育ヒント集

【経験者向け】発達障がいのあるお子さんの学校での困りごと:授業・休み時間など、場面別の対応策と家庭・学校の具体的な連携ヒント

Tags: 学校生活, 家庭と学校の連携, 発達障がい, 応用的なサポート, 個別対応

発達障がいのあるお子さんを育てていらっしゃる保護者の皆様は、日々、お子さんの成長をサポートしながら、様々な課題に向き合っていらっしゃることと思います。基本的な対応方法については既にご存知のことと存じますが、お子さんが学校生活を送る中で、これまでのやり方だけでは難しい新たな困りごとが生じることも少なくありません。特に、授業中や休み時間など、特定の場面での対応は、家庭だけでは解決が難しく、学校との連携が不可欠となります。

この記事では、お子さんの学校での困りごとに対し、家庭と学校がどのように協力し、具体的な対応策を立てていくか、そのための実践的なヒントをご紹介いたします。お子さんが学校で安心して過ごし、その子らしく成長していくために、ぜひ日々のサポートにご活用いただければ幸いです。

なぜ学校で困りごとが起きやすいのか?

学校という環境は、集団での活動が中心となり、多くのルールや予測しにくい出来事が存在します。発達障がいのあるお子さんは、特性として、情報の受け取り方や処理の仕方、対人関係やコミュニケーション、環境の変化への対応などに違いがあるため、学校の構造化されていない状況や、暗黙のルール、集団行動の中で困難を感じやすいことがあります。

例えば、

これらの困りごとは、お子さんの「わがまま」や「反抗」ではなく、特性が環境と合わないことで生じるものです。そして、これらの困りごとへの対応には、家庭と学校が協力し、お子さんの特性を理解した上で、具体的なサポートを計画・実行することが求められます。

特定の場面での困りごとへの対応と家庭・学校連携

学校での困りごとへの対応は、まず「どのような場面で」「具体的にどんな困りごとが」「なぜ起きているのか」を、お子さんの特性と照らし合わせて理解することから始まります。そして、その理解を学校と共有し、共通の認識を持つことが非常に重要です。

授業中の困りごとへの連携

困りごとの例:

連携のポイントと具体的なアクション:

  1. 困りごとの「見える化」: 保護者の方は、家庭でのお子さんの様子や、学校での困りごとについてお子さんから聞いた話、連絡帳でのやり取りなどを通して、どのような時に、どのような困りごとが起きやすいか、具体的な状況を整理します。可能であれば、お子さん自身に困っていることを絵や文章で表現してもらうことも有効です。
  2. 学校への情報提供: 学校には、整理した困りごとの状況に加え、「家庭ではこんな声かけや工夫でうまくいくことがある」「お子さんはこんなことに関心がある」「聴覚情報よりも視覚情報で理解しやすいようだ」など、家庭での対応や、お子さんの特性に関する具体的な情報を提供します。連絡帳だけでなく、学期ごとの面談などを活用し、より詳しく伝える機会を持つと良いでしょう。
  3. 学校での具体的な対応策の検討: 学校側で、お子さんの特性や困りごとに合わせた具体的な工夫を検討してもらいます。例えば、
    • 席順の工夫(窓際を避ける、前の方に座るなど)
    • 指示の伝え方(一度に伝えすぎない、視覚的な情報と併用する、個別指示など)
    • 集中するための工夫(イヤーマフの使用、パーティションの設置など)
    • 課題の調整(量を減らす、時間制限を設ける、スモールステップにするなど)
    • 休憩の許可(タイマーを使用し、決まった時間になったら休憩を取るなど)
  4. 家庭でのサポート: 学校での対応策と連携し、家庭でも同様の工夫や練習を取り入れます。例えば、学校で指示の聞き取りに視覚ツールを使う場合は、家庭でも同様のツールを使ってみる。学校でタイマー休憩を取り入れている場合は、家庭での学習時間にも取り入れるなどです。また、授業内容でつまずいている部分があれば、家庭で丁寧にフォローすることも大切です。
  5. 定期的な情報交換: 学校と家庭で定期的に情報交換を行います。「あの工夫はどうでしたか?」「家庭ではこんな変化がありました」など、お互いの状況を共有し、対応策の効果を評価し、必要に応じて見直しを行います。連絡帳、電話、短い立ち話なども活用できますが、可能であれば定期的な面談を設定し、落ち着いて話し合う時間を設けるのが理想的です。

具体的な声かけ・連携のフレーズ例(保護者から学校へ):

休み時間の困りごとへの連携

困りごとの例:

連携のポイントと具体的なアクション:

  1. 休み時間の過ごし方の把握: 学校での休み時間の具体的な様子を先生から詳しく聞き取ります。「誰とどのように過ごしているか」「トラブルになるのはどんな時か」「どこで過ごしていることが多いか」など、具体的な状況を把握します。
  2. お子さんの興味・関心の共有: 家庭でのお子さんの好きなこと、興味を持っていること、得意なことなどを学校に伝えます。「家では〇〇(特定のゲームや本、遊びなど)に夢中です」「〇〇(特定のスキル)が得意です」など、具体的な情報を共有することで、学校での過ごし方のヒントになることがあります。
  3. 学校での居場所作り・活動の提案: 学校側で、お子さんが安心して過ごせる場所(図書室、保健室、特定の先生のところなど)や、一人でも楽しめる活動(読書、絵を描く、先生のお手伝いなど)を提案してもらうことを相談します。また、少人数のグループでの活動や、共通の趣味を持つ友達との関わりをサポートしてもらうことも検討します。
  4. ソーシャルスキルトレーニングの視点: 友達との関わりで困りごとがある場合は、具体的なソーシャルスキル(誘い方、断り方、負けた時の気持ちの切り替え方など)を学校で指導してもらうことを相談します。家庭でも、ロールプレイングなどを通して練習したり、友達との肯定的な関わりを具体的に褒めたりすることが有効です。
  5. トラブル発生時の対応共有: 友達とのトラブルが発生した場合、学校での状況と対応、お子さんの反応などを詳しく共有してもらいます。家庭では、お子さんの気持ちを受け止めつつ、何が起きたのか、どうすれば良かったのかなどを一緒に振り返り、次に繋げるための話し合いを行います。学校と家庭で、トラブル発生時の声かけや対応の方向性を一致させることが望ましいです。

具体的な声かけ・連携のフレーズ例(保護者から学校へ):

連携を円滑にするための具体的なヒント

学校との連携は、一方的な要望を伝える場ではなく、お子さんの成長という共通の目標に向かって、お互いの状況を理解し、協力し合うパートナーシップです。

まとめ

発達障がいのあるお子さんの学校での困りごとは、お子さんが新しい環境に適応し、成長していく上で直面する自然なステップの一部と捉えることができます。これらの課題に効果的に対応するためには、保護者と学校が「チーム」として、お子さんの特性を深く理解し、具体的な情報を共有し、根気強く連携していくことが不可欠です。

お子さんの「困りごと」は、その子の「個性」が環境との間で生み出すサインでもあります。そのサインに丁寧に耳を傾け、学校と協力して、お子さんにとってより良い環境を共に作っていくことが、お子さんが自信を持って学校生活を送り、将来の社会生活に繋がる大切な経験を積むことに繋がります。一人で抱え込まず、学校の先生方や、必要に応じて他の保護者、専門機関とも繋がりながら、お子さんの成長をサポートしていきましょう。